全く身に覚えがない。
 寝言で呼ぶような女など、さっぱり思い当たらない。
 こちらこそ寝耳に水だ。

 ロイドがうろたえていると、後ろからランシュが腕を強く引っ張った。


「見損ないました、先生。あなたはユイを大切にしてくれていると思っていたのに」
「ちょっと待て。オレには心当たりがない」


 ランシュはロイドを一睨みして、そばにいたモエを笑顔で抱き上げる。


「モエ、オレがパパになったら嬉しい?」


 ロイドはランシュの肩を掴み、ムッとして問いかけた。


「こら。おまえ、まだ諦めてなかったのか」
「あなたがユイを泣かせるような事をするなら、話は別です」


 ロイドを冷たくあしらった後、ランシュは再びモエに笑顔を向ける。