毎年この時期になると、ユイがおねだりする事がある。


「二十四日の夜は、早く帰ってきてね」


 渋い顔をする副局長を尻目に「家事都合だ」と言い捨てて、言われた通りにとっとと帰る。

 ユイのおねだりは貴重なのだ。

 帰ってみると必ず、食卓の上にはいつもより豪勢な料理が並んでいた。

 真ん中に置かれた大きな白いケーキには、周りを取り囲むようにイチゴが並べられ、中央にチョコレートで何やら文字が書かれている。

 ユイの国の文字なのだろう。

 部屋の隅には小さな木の鉢植えが飾り立てられ、電飾を明滅させている。

 そしてケーキにローソクを立て、発泡性の白ぶどう酒を掲げ、意味不明の呪文と共に乾杯する。