「片付けないなら、いらないものと見なして全部捨てちゃうわよ」
「わかった。すぐに片付ける」


 慌てて立ち上がったロイドは、側にあった箱を持って部屋を出て行こうとする。
 しかし出入り口で結衣の持ったカボチャパイを目ざとく見つけて近寄ってきた。


「何だ、それは?」
「カボチャパイよ。いくら言っても片付けない人にはあげない」


 本当はそんなつもりは毛頭ない。だが、あまりにもひとの言う事を聞かないのがシャクに障って意地悪をしてやりたくなった。

 大げさにふくれっ面をして、パイを隠すようにロイドに背中を向ける。
 するとロイドは、持っていた箱を床に置いて、両腕を結衣の腰に回した。
 肩の上にあごを乗せて耳元で甘えたように言う。


「おまえひとりで食べきれないだろう?」
「心配無用よ。残ったら明日のおやつにするから」
「強情だな」