結衣は軽く嘆息し、ロイドの背中を押した。


「挨拶なら、ゆうべ済ませたから」
「なんだ、そうか。見たかったのに」


 堪えきれずに笑い始めた蒼太と、微妙な表情で微笑む両親に手を振って、結衣はロイドと共にクランベールに飛んだ。

 あまりにあっさりとした別れをロイドは不服そうにしていたが、元々結衣は実家を出てから、盆と正月、大型連休くらいしか家に戻らない生活をしていた。

 両親にとっても、結衣の居場所が変わるだけで、これまでと大差ないのだ。
 両親の胸の内は分からないが、結衣が結婚を実感するのは、これからだろう。

 王宮内の研究室に着くと、以前より室内はガランとしていた。

 いずれ研究室も王宮内から科学技術局に移すため、少しずつ荷物の整理をしているらしい。

 またしばらくの間、王宮内に厄介になるので、まずは国王と王子に挨拶に行った。

 結婚式を日本で済ませた事を告げると、盛大な式を計画していた二人は残念そうにしながらも、ロイドと結衣の結婚を祝福してくれた。