理由を訊くと、外国人男性は着物を着ると、十中八九、刀はないのかと尋ねるらしい。

 どうも外国人には、日本というと侍の印象が根強く、和服には刀が付きものだと思っているようだ。
 それで写真館には、模造刀が常備されるようになったという。

 見るからに外国人のロイドは、きっと刀を持ちたがるだろうと予想して、言われる前に気を利かせたわけだ。

 諸外国の日本に対する印象など知る由もないロイドは、特に疑問にも思わず、言われるままに刀を持って写真に写った。

 結衣も特に反対はしなかった。
 なにしろ、和服も日本刀も珍しくて仕方がないロイドが、なんだか楽しそうだったからだ。

 結婚式は写真を撮る前日、近所の神社で行った。

 出席者は結衣の家族と、比較的近所に住んでいる親戚が数名だけだった。

 この親戚たちは、結衣が帰省するたびに見合い話を持ってくるので、結婚する事を見せつけておかなければならない。