遺跡の周りにいた人々が出店や街になだれ込み、一層賑わいを見せていた。

 結衣たちも出店を覗きながら、街をそぞろ歩く。

 出店で買ったソーセージをかじりながら、蒼太がポツリとつぶやいた。


「願い事、叶うといいなぁ」


 三人の中では蒼太の願いが一番切実なので、分からなくもない。


「あんたのは日本語で書いてあるから、ここの神様にはわからないかもよ」
「神様に言葉は関係なくね?」
「そうだといいわね」


 結衣は笑ってロイドに向き直った。


「小さいあなたのお願いも叶うといいわね」
「うるさい」


 ロイドは顔をしかめて、結衣の額を叩いた。

 小さいロイドのお願いが微笑ましくて、結衣は思わず頬を緩める。

 たどたどしい文字で、一生懸命書かれたお願い。


”かみさまへ
   りゅうをゆるしてあげてください”


 でも、このお願いが叶って、竜が天に帰ってしまったら、遺跡は二度と光らないのかもしれない。

 それはちょっと寂しいなと、結衣は思った。



(完)