「誰も使っていないのに、お風呂場から点々と濡れた足跡が、部屋を歩き回ってたんだって」

「えぇ?!」


 結衣は思わず吹き出して、種明かしをした。


「犯人は王子様だったんだけどね」
「なんだ、そういうオチかよ」


 ホッと息をつく蒼太に、結衣は笑いながら忠告する。


「まぁ、他にも幽霊話はあるらしいから、絶対出ないって保証はないわよ」
「えーっ? なんか、やだなぁ」


 ブツブツ言いながらロイドに挨拶をして、蒼太は客室に入っていった。

 扉が閉じられた途端、中で蒼太の「うわっ!」という声が聞こえた。
 多分、部屋の広さに驚いたのだろう。
 結衣はクスクス笑いながら、ロイドと共にロイドの部屋に向かった。