結衣は咄嗟に両手で頬を押さえた。
 以前にもそんな事を言われたが、いったいどんな顔なんだか気になる。思い切って尋ねてみた。


「そんな顔って、どんな顔?」
「オレを誘う顔だ」


 全く要領を得ない。
 元々、結衣にはそんなつもりは毛頭ない。

 結衣が大きくため息をつくと、ロイドが再び抱きついてきた。


「ヤバイ。またキスしたくなった」
「ダメ! お預け!」


 結衣はロイドを振りほどき、素早く蒼太に電話をかける。


「もしもし、蒼太?」


 結衣が呼びかけると、背後でロイドの舌打ちが聞こえた。