ロイドが頼んだわけではなさそうだが、王子が気を利かせたらしい。

 そんな風に二人きりになれる時間が少ないと、結衣の帰り際にロイドは子供のように駄々を捏ねる。

 結衣は子供をあやすように、ロイドの背中をポンポン叩いた。


「あと十日経ったら、ずっと一緒にいられるから」
「あぁ」


 ロイドは結衣の頬をひと撫でし、あごに手を添えて上向かせると優しく口づけた。

 結衣は今月一杯で会社を辞める。
 丁度いいので、今住んでいるマンションも引き払って、来月からロイドと一緒に住む事にした。

 結婚はロイドのスケジュールを調整して、もう少し先の事になるので、しばらくは王宮のロイドの部屋に居候する事になる。

 そのための引っ越しや荷物の整理があるので、有給休暇の消化も兼ねて、今月の終わり頃は会社を休む。
 あと一週間くらいしか、会社に行かないのだ。