地上に降りてもいいかと神様に尋ねたら、神様はダメだと言いました。


「人はまだ、おまえに比べると知恵が足りない。いろんな事を自分で見て、聞いて、考えて、学ばなければ、人の知恵は育たない。おまえに会って簡単に知恵を手に入れたら、人も地上も上手に育たない」


 神様はそう言って、竜が地上に降りる事を禁じました。

 ところが禁じられた事によって、竜は益々地上に降りたくて仕方がありません。


「人に会わなければ、かまわないだろう」


 とうとう気持ちを抑えられなくなった竜は、神様の目を盗んで、こっそり地上に降りてしまいました。

 竜は人に会わないようにするため、大きな森の中に隠れました。
 森の木々の上から、ちょっとだけ顔を覗かせて、辺りを眺めます。

 目の前に広がる地上の様子は、天から見ていた時よりも、ずっと素晴らしいものに見えました。