「染(うつ)してもいいか?」


 こんな時に病気の事を気にしているのがおかしくて、結衣はクスリと笑った。


「私、めったに風邪ひかないの。染せるもんなら、染してみれば?」
「望むところだ」


 ロイドはニヤリと笑い、思う存分口づけた。



 結局、結衣は風邪をひく事もなく、ロイドも驚異の快復力で、翌日には熱も下がり普通に動けるようになった。
 そのため結衣は心置きなく、予定通りに三十日の夜に実家へ帰った。

 後で聞いたが、ロイドは両親にクランベールの事を話していたらしい。
 それでもなお、ロイドを信用した両親の懐の深さに、結衣は感服した。

 そして、そうさせてしまうロイドの人柄と魅力にも、改めて感心した。



(完)