インフルエンザだったらまずい。
 クランベールに未知のウイルスを持ち込んで蔓延したら、紛れもなくバイオハザードだ。

 ロイドは保険証がないので、病院へ行ったら実費がかかる。
 ロイドにリモコンを借りて、結衣だけクランベールに行った。

 人捜しマシンの筒の中から、通信機でローザンを呼び出す。
 事情を説明して、扉の隙間からロイドの鼻水の付いた綿棒を渡し、調べてもらった。

 幸いにもウイルスは検出されず、どうやらただの風邪らしい。

 結衣は日本に戻って、両親に電話で伝えた。三十日に帰れないかもしれない。

 両親は「しっかり看病してあげなさい」と言って笑った。

 まだ寒さが続くという日本にいても病気が悪化しそうなので、ローザンにもらった解熱剤で一気に熱だけ下げて、その隙にロイドをクランベールに連れ帰った。

 解熱剤の効果が切れると、熱は再び上がり始めた。
 ローザンが打ってくれた注射のおかげで、先ほどよりは幾分マシになったようだ。

 ベッドで眠るロイドの横で床に座り、結衣は帰りにコンビニで買ったおにぎりを食べた。