「オレ、暑くなってきたから、もう寝るわ。ロイドさん、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」


 ロイドの返事に軽く手を振って、蒼太は二階に上がっていった。

 母は父を起こした。
 そのまま寝るから灯りだけ消してくれれば、後片付けはしなくていいと言い残して、父の身体を支えながら寝室に引き上げた。

 二人きりになった居間で、ロイドは手にした缶ビールの残りを一気に飲み干した。


「いい家族だな。おまえがここで幸せに暮らしていた事がよくわかる」
「うん」


 結衣が笑って頷くと、ロイドは肩を抱き寄せた。


「オレは家族の温もりを知らないし、今まで家族を欲しいと思った事もない。けど、気が変わった。おまえと一緒に家族を作りたい。そして、ここで感じていた以上に、おまえを幸せにしてみたい」


 そう言ってロイドは結衣を両腕で抱きしめた。


「おまえの両親には了解を得た。結婚しよう、ユイ」
「うん」


 二度目のプロポーズに、結衣はロイドの腕の中で何度も頷いた。