結衣が頭の天辺から声を上げると、隣でロイドが吹き出した。


「おまえらしい話だな」
「なによ」


 結衣がムッとして問うと、ロイドは尚もクスクス笑いながら答える。


「おまえ、男に縁がなかったって言ってたが、ニブすぎて気付いてないだけだろう。今の話がいい例だ」

「悪かったわね」

「まぁ、オレには好都合だけどな。もっとも、そいつの話をおまえが受けていたとしても、オレが絶対奪ってやる」


 家族の前で堂々と言ってのけるロイドに、どう反応していいか分からず、結衣はどきまぎして視線を泳がせた。

 見ると父は少し飲み過ぎたようで、居眠りを始めていた。
 その身体を支えて、母が口に一本指を当てて「しーっ」と言いながら笑っている。
 蒼太は大袈裟にため息をついて立ち上がった。