国民の証であるIDカードが、電子マネーとして根付いているからだ。

 IDカードが電子マネー化されて、商店や個人を狙った強盗犯罪は激減したという。
 商店も個人も、足の付かない現金を手元に持っていないからだ。

 IDカードやその認証装置を偽造される事はないのか尋ねたところ、そんな天才がいるなら科学技術局にスカウトしたいと言われた。

 詳しい事は分からないが、開発段階から偽造が困難な製法と体制で作られているらしい。

 コンビニを出て少し車を走らせると、結衣の実家にたどり着いた。

 結衣の実家は閑静な住宅地にある、ごく普通の一戸建てだ。
 車一台分の車庫と小さな庭のある二階建てで、居住空間の床面積は王宮のロイドの部屋よりも、多分狭い。

 小さな庭の隅は、母の趣味で家庭菜園になっている。
 今の季節は毎年、ブロッコリーと白菜が少しずつ植わっていた。

 車を車庫に入れて全員が降りると、結衣の荷物をロイドが持ってくれようとしている隙に、蒼太は先に玄関に向かった。