「来ますよ、白石」
黒王の表情は真剣である。
「本当に来ますかね……」
「来ます。あいつにはいい加減懲りて、大人しくしてもらいたいところですよ」
同時に、愉快そうでもある。
新米の頃から今まで何度か戦った相手。その相手が今宵も黒王に立ち向かう。以前よりも手強くなった少年と、さらにキャリアを積んだ警部、黒王。
勝つのはどちらか?
勝負の行方は、神のみぞ知る。
好敵手との再開が、今ここで――!
と、勝手に膨らんだ刑事ドラマファン白石の妄想は、我に返った白石自身によって掻き消されたのであった。
「ば、馬鹿馬鹿! 俺馬鹿!」
「は?」
「あーいえいえ! 気にせず――あ!」
それは突如現れた。
先の見えない、ただ闇に向かっていた道路の向こう。まばゆい光を発しながら燃える炎が二人の目に焼き付いた。
「ほ、本当に来た! すごいです警部、左折って当てた!」
炎は一点の光から次第に大きくなる。
始めは幽霊が連れ歩く火玉のようでもあったが、それが大きくはっきり見えるにつれて実態も明らかになる。
少年だ。炎の根源は確かに少年である。
誰もがそれを目の当たりにすれば自身の目を疑うだろう。冷静そのものであった黒王でさえ目を見開いている。
「どういうことだ……?!」
この世の不条理に、尋ねた。
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