雨が降っていた。


外灯を反射して雨が光っている。


「解ってる……」


制服が重たかった。


容赦ない雨に、すっかりずぶ濡れな僕ら。


「家で彼女が待っているんでしょう……?」


真正面から僕を抱く細い腕。


黒髪からはいく筋もの、水晶の欠片……。


「解ってるの。この恋が実らないことは……。だって、わたくしもあなたも、籠の鳥――」


指に食い込む鼻緒が、痛みを連れてくる。


だけどこれは本当に、足の痛みか……?


「あなたをこれからもずっと、お慕い申しております……」


ゆっくり腕を解きながら、彼女が言った。


「次の世では……必ず……」


涙と雨で濡れた頬。


張り付く黒髪が、愛しさを胸の奥から引き出す。


僕はたまらず、彼女を胸にかき抱いた。


「すまない……」


――離したくない。


「僕だって君だけだ」


僕はそのまま、彼女の唇を塞ぎ、側の大樹に押し付けた。


「あ――」


はだけた着物から乱暴に膨らみを引き出し、唇に含む。


彼女の首筋を伝う雨が、一緒に舌に絡んだ。


そう、僕らは籠の鳥。


親の言いつけに逆らえない。


雨が激しさを増し、光の数を増やす。


彼女の美しい柔肌と先端の朱が、その光
を纏ってきらめいた。


「あ、あなた……!」


はだけて乱れる着物に雨が滑る。


僕はその味と共に、彼女を飲み込んだ。