…いや、あのときは正直、捕まる気はなかったのだが。 しかし、今はもう抵抗する気も、まして逃げることなど考えていない。 「私は、逃げないよ」 そう言うと、彼はふ、と笑って。 「…まぁ、逃がすつもりもないけどな」 そのとき、サァ……と、強く風が吹いた。 橙の瞳が、揺れる。 碧色の髪も、揺れる。 月の光に照らされて、淡く輝き始める。 そのとき初めて、私は少しだけ笑った。