「真琴?いるか?」

「幸村?」


本人だとわかっていたけど何となく確認してしまった。

まさか本当に来るとは思ってなくて動揺したのもあるかもしれない。


「あぁ……入っていいか?」

「もちろん。」


私の許可を得た幸村が部屋に入る。

そして私の前に正座した。


幸村と面と向かうのは初めてかもしれない。

心臓がバクバクする……っ


「で、どうしたの?こんな時間に。」


話題を振る。

そうでもしないと頭がショートしそうだった。


「あのだな……」

「うん…」

「お館様の件……よく頑張ったな。ありがとう。」


一瞬時が止まったかと思った。

まさかこのタイミングで私が待っていた言葉を聞けるなんて……。


「へへっ。……でも完全に説得させることはできなかった…ごめんね。」


「いや、真琴が説得に行かなかったらきっと何も変わらなかった。」


あぁ……

やっと少しは役に立てたんだ……。


そう思うと同時に涙が零れた。


「ま、真琴⁈大丈夫か⁈」


目の前でオドオドする幸村。

その様子はたまらなく可愛らしい。


「大丈夫……やっと少しは役に立てたって思ったらさ……勝手に……」


「……真琴に無理をさせてしまった。すまぬ……っ」


幸村はそう言った。

先ほどの様子からは考えられないくらい真っ直ぐな視線だ。


「それは違うよ、幸村。これは私が未来から来た唯一の人間だから……。」

「違う!俺は真琴に無理をさせた!一人で悩ませて……!」

「………。」

幸村の本気の訴えに私は何も言えない。


「もしかしたら俺の所に来なければこんな事にはならなかったかもしれない……。それなのに」

「そんな言い方はやめて?私は真田家に来れてよかったよ?というより宿命かな。」


私は幸村に微笑みかける。


「覚えておいて?最終的に真田家に仕官したのは私だから。幸村がそんなに心配しなくてもいいんだからね?」

「………わかった。」


そう答えた幸村の表情には険しさは全くなくなっていた。


「あ、幸村」

「なんだ?」

「わざわざ言いに来てくれてありがとう。」

「………おうっ」


照れる幸村を見て私はクスクス笑う。


「なっ!笑うな真琴!」

「ごめんごめんっ」


こんな日がいつまでも続けばいいのに……。

そう思った。