錆び付いてしまったドアノブを押して中に入ると、中では換気扇が回る音しかしなかった。



「…伯、お前拳銃は?」



先に署に戻って拳銃許可を取ってきたので俺は拳銃を携帯していた。



「許可が下りるわけないだろ。僕は刑事じゃないんだから。」




「お前それ前にも言ってたけどどういう意味……」



「シッ!」




あ、ハイ。



様子を伺っても人の気配は未だしない。



伯に待っている様伝えてから
自分だけ進む。




奥に進んでも換気扇の音が遠くなるだけだった。



窓がある少し広い場所が見えた。



物陰に隠れて様子を窺った。



一つ息を吐いて拳銃を握り直す。



よし




「動くn「相楽!」




伯の声に遮られた。



ちょ、おま



「さっさと退くぞ!裏口から車で逃走しやがった!」



聞いて走り出した。



クソ、逃げるなんて!



工場から出ても、後に残っていたのはタイヤの後だけだった。



「糞っ!」



思わず罵倒を飛ばし地面を蹴る俺に対して伯は冷静だった。



「なんで来たのがわかったんだろう。」



「は?気配でも感じたんじゃないのか?」



「相手は健太っていう人質、しかも子供がいたんだぞ。それなのに動きが早過ぎる。前もって逃げ道は用意してたにしても、裏口から逃げるなんてリスクが高い。」




「なんで?普通裏口から逃げるだろ。」



「僕たち二人だけだったから裏口から逃げるのは簡単だったんだろう。」



「だからそれは仕方ないだろ。
あまりにも急だったし俺らが一番近いところにいたから飛ばされたんだぞ。」



「クズめ」



「いきなりの罵倒!」



しかし伯はこれ以上言うつもりはなかったのか、


「ナンバーの確認はできなかったけど、黒の軽自動車だ。」



と言い残して廃工場の中へ入っていった。



俺は淳子さんに連絡をしてから廃工場へと伯を追いかけた。