天使の舞―前編―【完】

なにがなんでも、次代の覇権と人間の妃は、魔界が手に入れねばならない。


それが魔王アカツキの望みなのだ。


どんな手段を使っても、天界に覇権は渡さない。


天界の王子が契約した人間を、魔界の王子が手中に納めてしまえばいいではないか。


目には目を、歯には歯を。今度はこちらが奪う番だ。


そんな理由から、彼方は父である魔界の王よりの命を受けて、乃莉子を強引に魔界に連れて来た訳である。


魔界の王子の妃として。


しかし彼方は、この命令には不安があった。


連れて来るのはいいが、愛し合わなくては人間に翼は与えられず、意味をなさない。


果たして自分は『その』人間を愛する事が、できるのだろうか…と。