天使の舞―前編―【完】

その奇跡の翼を手に入れた王が、代々覇王たるに相応しいとされてきた。


―今、覇王の称号を得ているのは、天界の王ウェルザである。


その天王であり覇王でもあるウェルザを、恨みにも似た気持ちで思い続ける人物がいた。


現、魔界の王アカツキである。


自分が果たせなかった覇王への執着が、アカツキをこだわらせていた。


そしてもう一つ、アカツキにはこだわるものがあった。


現天王妃シンシアである。


アカツキはかつて愛した人間シンシアを想うと、未だに胸が押し潰される気持ちになるのであった。


彼等がまだ王子で、人間界へと妃探しに舞い降りた時、悪戯にも二人は同じ時期にシンシアと出会ってしまったのだ。


偶然とはなんと、罪深いものであろうか。


或いは、必然的に仕組まれた試練であったのだろうか。