天使の舞―前編―【完】

少し上目遣いに、悠はまだ彼方に睨みを効かせている。


「お取り込み中の所ぉ、悪いんだけどさぁ。」


牽制し合う両者に、宮田が声をかけた。


空間読めよ!と言わんばかりに天界の王子と魔界の王子は、同じタイミングで宮田を鋭く睨んだ。


二人の視線にかなり動揺して、怯んでしまったが、そこはさすがに店長。


店を守るために、踏ん張って言うべき言葉を絞り出した。


「仕事…始めたいんだよねぇ。」


宮田のごもっともな言葉に、悠と彼方はバツが悪そうに、対戦モードを一時停止した。


「はい。すいません店長。
すぐ仕事に入ります。」


宮田の遠慮がちな声に、いち早く反応して、パァっと明るい顔に戻った乃莉子。


これ幸いとばかりに、二人の王子を押し退けて、店の奥のロッカールームに姿を消した。