「ずっとそんな話を聞かされてきて、誰が覇王になりたいなんて思うんだよ。
俺は絶対ごめんだね。」


キャスパトレイユは、真っ向から反抗して見せた。


キャスパトレイユの不貞腐れた顔をチラッと見て、シュカは小さく口元に笑みを浮かべた。


「シュカ、笑うな。」


キャスパトレイユに諌められたが、シュカは笑みを納めず、軽く咳払いをした。


「申し訳ございません。
ウェルザ様は、あの頃も今もお変わりなく、シンシア様を愛しんでおられる。
まこと良き事にございます。
キャスパトレイユ様もきっと、愛すべき人間の娘と巡り会い、良き覇王になられることでしょう。
恐れながら、まだ本気で愛する娘がおられないのなら、早い内に天界の娘達とは、お別れになっておくのが、よろしいかと存じますが。」


シュカの話を聞いて、キャスパトレイユは、今日何度目かのため息をついた。


「親のノロケ話聞いたって、面白くもなんともねぇ。
…分かったよ。
行けばいいんだろ、人間界。
その代わり、人間の娘を妃にするって保証はないからな。
俺は覇王になんか、なりたくないんだ。
覇王は魔界の王子、アマネにやってもらえよ。」


キャスパトレイユは、すくっと立ち上がり、身を翻して王の間を後にした。