天使の舞―前編―【完】

騙し討ちまがいの事をしておいて、悠は堂々と乃莉子に言い放った。


段々と乃莉子の胸の内に、怒りの感情が沸いてくる。


「帰ってよ。
もう!帰ってよ!」


乃莉子は半ベソをかいて、悠を睨んだ。


悠はキョトンとして、さっきまで穏やかだった乃莉子が、何故急に怒りだしたのかが、さっぱり分からない。


しかも乃莉子は、今にも泣き出してしまいそうな表情になっているではないか。


「何だよ急に。」


悠がそんな事を思っている矢先、遂にポロリと乃莉子の瞳から涙がこぼれ落ちて、下を向いてしまった。


「乃莉子?どうした?
おい、どうしたんだよ…?」


オロオロして、乃莉子の様子を伺う悠。