天使の舞―前編―【完】

宮田は自分で出した声の大きさに、辺りを見渡す。


「ここじゃ何だからぁ。」


宮田は二人を、店の中に入るよう促した。


メルヘンに一歩足を踏み入れて、店内を一通り眺めた悠は、満足そうに頷いた。


どうやらここは、悠のお気に召したらしい。


カラフルなポップに彩られ明るいのだが、どこか落ち着いた雰囲気を持つ、本屋ならではの店内。


開店前の時間とあってか、静かな空間が、一際そう見せているのかもしれない。


「ふーん。乃莉子って、ここで働いてるのか?」


「そうだけど。」


乃莉子は怪訝な表情で、悠をちらっと見た。


「そしたら俺も、ここに居てやるよ。」


乃莉子はびっくりしすぎて言葉にならず、悠を見上げた。