天使の舞―前編―【完】

しばらくの静寂を楽しむと、おもむろにウェルザが口を開いた。


「さて、キャスパトレイユ。
お前の事だ、やはり覇王にはならん、と言うのだろう?」


一連のやり取りを、黙って聞いていたキャスパトレイユは、まだ余韻の中にいた。


「えっ?あっ・・・あぁ・・・。」


父の言葉に、咄嗟に反応できず、曖昧に答えてしまう。


「アマネはどうだ?
覇王になる気はあるか?」


アマネは、きちっと片膝を付いて、改まってウェルザに向かい合った。


「恐れながら覇王様。
私の思いも、かつての覇王様と、同じにございます。
私はシラサギが居てくれれば、他には何も望みません。」


僅かに微笑み、ウェルザはキャスパトレイユに視線を向けた。


「だ、そうだが?」


「俺だって、ごめんだね!」


「しかしお前の妃は、シンシアと同じ人間だ。」


「っっっ!」


「諦めるんだな。
忙しいのは、仕方がない。」


ウェルザは息子の悔しそうな顔を見て、可笑しそうに笑った。