天使の舞―前編―【完】

「ご心配には及びませんわ、ミヤビ様。
あれから長い時が流れたのですもの。
ずっとアカツキに寄り添って、見守ってきたのは、ミヤビ様、あなたです。
アカツキの心の隙間を埋めて、魔王としてのアカツキを支えてきたのは、他ならぬミヤビ様、あなたなのですわ。
ミヤビ様は、アカツキにとってなくてはならないお方。
私の存在など、ちっぽけなモノですわ。」


「シンシア様･･･。」


「きっと、この長い時間が、アカツキの思い出の中の私を、美化させてしまったのね。
ふふっ･･･。
私は、そんなにいい女ではないのよ。」


アカツキは口元に、ニヤっと薄い笑みを浮かべて、シンシアを見た。


「最高の女だよ。」


そう言うと、椅子から立ち上がり、ミヤビの手を取った。


「帰る。」


バサッと黒い翼を一度羽ばたかせ、振り返る事なく、アカツキはミヤビを連れて謁見の間を後にした。