天使の舞―前編―【完】

「申し訳ございません。
こっそり後をつけて参りました。」


真っ直ぐにアカツキを見つめながら、ゆっくりと歩み寄ってくるのは、艶やかな美貌にどこか影を秘めた、魔王妃ミヤビであった。


天王妃シンシアと、魔王妃ミヤビとは、全く反対の容貌をしていた。


天真爛漫とシンシアを表現するならば、どこか儚げなミヤビは才色兼備というのが相応しい。


そんなミヤビは、アカツキの近くまで来ると、ウェルザとシンシアに静かに膝を折って、敬意を表した。


そしてなりふり構わず、アカツキにすがった。


「アカツキ様、お願いでございます。
これから先も私を、アカツキ様のお側に置いて下さいませ。
私にシンシア様の代わりは、無理なのかも知れません・・・。
ですが私は、あなた様のお側にいたいのです。
どうか・・・どうか・・・アカツキ様!
私をお見捨てにならないで。」


胸の前で両手を組んで、アカツキに懇願する姿に、その場にいた全員が、いたたまれない気持ちになった。


特にアマネには、堪えがたい場面であったようで、目を瞑り顔を背けていた。


シンシアは、そんなミヤビに笑顔を向けた。