苦しいくらいに抱きしめられて、乃莉子は胸の奥がキュンとする感覚を覚えた。


「助けてくれて、ありがとう。」


戸惑いながら、乃莉子はお礼を言う。


「馬鹿だな。
礼なんていらねぇよ。
ヨメをさらわれたんだ、助けに行くのは当然だろ。」


乃莉子は、キャスの言葉を否定することなく、目を細めてクスッと笑った。


そんな乃莉子が愛しくて、キャスはワンレンの乃莉子の前髪を、そっとかき上げる。


恥ずかしさで、乃莉子は軽く目を瞑った。


乃莉子の背中に手を回し、静かに引き寄せると、キャスは愛しい唇を自分のそれで塞いだ。


乃莉子も抵抗することなく、キャスに身を委ねている。


キャスパトレイユのキスが、乃莉子は意外にも、嬉しかったのだ。


『私のこの気持ちって…もしかして、吊り橋効果?』

乃莉子は自分の感情を勘ぐってはみる。


でも乃莉子は確かに、甘く穏やかなこの時間を、好意を持って受け入れていた。