天使の舞―前編―【完】

アマネは力一杯、シラサギを抱きしめる。


「これを最後にするから…。」


アマネの静かな言葉に、シラサギは従った。


抗う術など、シラサギにある筈がない。


叶う事なら、シラサギの方こそ、ずっとこうしていたかったのだから。


不意に体の自由が戻った。


アマネの腕が、シラサギから離れたのだ。


「行く。
妃を待たせてある。」


アマネは立ち上がり、何かを振っ切ったように、しっかりと階段を踏みしめた。


「はい。
私は扉の外に、控えております。」


アマネの後ろ姿に一礼して、シラサギはそれ以上の言葉を飲み込んだ。


自分の震える声で、アマネの決心を鈍らせる訳には、いかなかった。


シラサギは、永い月日をかけて育んだ、甘く心地よかった想いに、別れを告げた。