天使の舞―前編―【完】

ミヤビはアカツキから、その事実を聞かされて、心の底から嘆き、悲壮感に押し潰されそうだった。


でも或いは、王子を産めば魔王は、自分を認め振り向いてくれるかもしれない。


そんな淡い期待が、ミヤビの心の支えであったのだが、王子を産んでも尚、アカツキがシンシアを忘れる事はなかった。


毎夜シクシクと泣きながら
『覇王におなりなさい』
と語る母は、幼いアマネの目にも、とても儚く映ったものだ。


そんなアマネの記憶は、自分の未来をも支配して、誰かを愛する気持ちまで、無意識に制御させた。


愛するのは、人間の女でなければならないからだ。


でもアマネは、共に同じ時間を育ったシラサギに、特別でいる事を望んだ。


シラサギにだけは、心を許し本音で語り、時に弱音を吐いたりもできたのだ。


アマネはシラサギを、姉のように慕っていたはずだったのに。


でもある日気づいてしまった。


シラサギが、女である事に。