黒き翼を持ちながら、階段をゆっくりと噛み締めるように昇る、二人の物好きとは、アマネとシラサギである。


どちらも言葉を紡ぎ出せずにいた。


アマネは魔界の王子であり、シラサギは王子のメイド。


向かっている先は、王子の妃になる人間が待つ部屋である。


この関係性は明確で、揺るぎないものだ。


しかし、胸の内に秘めた想いは違う。


口に出してしまったら、後戻り出来なくなってしまう。


それを二人は、恐れていた。


だから、お互いを愛しむ気持ちは封印され、心の奥深くにしまってあった。