天使の舞―前編―【完】

「王子…。剣を…。」


兵士は言い付けられていた剣を渡すという役目を無事に果たし、アマネから離れた。


磔台と一本の剣。


磔台は地面に固定され、剣はアマネに手渡される。


その手渡された剣は、王子が身分を誇示するため、腰に下げるような、豪奢な装飾のついた、飾り物の剣とは違った。


実戦で戦士が振り回す、効率よく人に危害を加える目的で造られた、武器である。


“シュリン…”と金属が擦れる音がして、アマネの手によって、鞘から剣が抜き放たれた。


よく手入れされて、研ぎ澄まされた剣は、早く獲物をよこせと言わんばかりに、妖しい光を放っていた。