天使の舞―前編―【完】

そのタイミングでキャス達の上空から、聞き覚えのある声が降ってきた。


見かねた乃莉子が、窓から身を乗り出して、叫んでしまったのだ。


「悠く~ん!!!」


キャスは勢いよく声のした方を見上げ、あの魅力的な満面の笑みを、声の主に投げ返した。


やっと見つけた乃莉子は、不安な瞳を揺らしている。


愛しい妃が、怯えているのだ。


乃莉子がどこに居るかを完璧に捉えたキャスは、今すぐこの手の中に抱きしめて、安心させてあげたいと、心から思った。


居場所さえ分かれば、助け出す事が出来る。


この先の行動は決まった。


キャスパトレイユは密かに、不敵な笑みを、浮かべたのであった。