さらに10分ほど色々と検査を行ったが、どれも異常は認められなかったらしい。
「……うん、これならもう帰っても問題なさそうね。」
その日下の言葉に、しかし、アスカは戸惑った。
「あ、あの………。」
商業施設の違法使用。
違法薬物の摂取。
自分の行為は、罪に問われないのだろうか───?
アスカの表情が曇ったのを見て、日下はその事を察したのだろう。軽く微笑を浮かべ、
「あなたの行為には違法性は認められない、との判断が既に下されています。心配しなくても良いわ。」
よほど企業に対して大きな損害を与えないかぎり、初犯は黙殺される、というのが企業警察の方針だと世間でも言われている。
それを聞いてひとまずホッとしたアスカだったが………、だが、もう一つ気に懸かる事があった。
「え、えと……日下さん……。
あそこにいた、他の子たちって……。」
アスカをあの場に誘ったユッコや、シルバーの短髪の青年が、次々に頭に浮かんだ。
日下は、検査器具を片付ける手を休めずに、一言、
「………それは聞かない方が良いわね。」
その物言いは、正に氷のような冷たさを持っていた。だがそれは、彼女なりの優しさだったのだ。
『……聞けばお前も───。』
つまり、そういう事だと悟ったアスカは、それ以上の詮索を素直に諦めた。
ベッドからけだるい体を何とか引き剥がし、日下に礼を述べる。
そして、案内された女子ロッカーで6時間ぶりに制服に着替え、企業警察の派出所を後にしたのだった。
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