(夜………、か。)
ほどなくやって来る、夜の帳があたりを包む光景を思い浮かべながら、ショウは先ほど体験した、夜よりなお暗い闇が支配する世界を思い出していた。
あの闇の世界で泣いていた幼い少女………。
あの子は、間違い無く現実世界のアスカの心そのもの、なのだろう。
(まだ20にもならない高校生の心に、あれだけの闇が………?)
そこまで考えて、しかし、ショウは頭を一つ大きく振ってその思考を追い払った。
(俺には、関係の無い話だ…………。)
しばらくして、また倉庫の扉が開く音がした。通信で現場の引き継ぎを行っていたレイジだった。
「……何でいつも、こんな損な役回りばっかり………はぁ。
大体、ショウがいけないんだっ!そもそも、こんな現場の仕事に、後方担当の私が出る必要なんか、初めから無かったんじゃないかっ!それをいちいち………!」
レイジの怒りが愚痴となって、活火山のマグマのように噴き出しはじめた。
「私たちがヒマだと言い放つ、その無神経さは一体何なんですか!
……分かってない………全くもって分かっていない!!
もう少し、我々の重要さを認識しなさい!!
……ちゃんと聞いているのですかっ?!」
靴先が火を発するような勢いで180度ターンし、ビッと伸ばした人差し指を鼻先に突き立て、厳しい口調で対象を追い詰めるレイジ。
……だが、当然、そこには誰も居ない。
しばしの沈黙の後、対象に突き立てたはずの人差し指を引き戻し、額の頭髪の生え際あたりをコリコリと掻く。
「……また、やってしまいましたか………。
…ハハ、はははは…………」
照れ隠しに笑うレイジ。そのレイジの目の前10cmに、まるでその瞬間を見計らってたかのようにショウの運転する車がスルスルと滑り込み、ピタリと止まった。
バクン、と音を立てて開いたドアから、ハンドルを握ったショウが「どうかしたか?」、といった表情でレイジの方を見ていた。
口を何度か開閉して何か言おうとしたレイジだったが…………、結局、何も言えずにすごすごと車に乗り込んだのだった……。
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