(………アスカ……だっけか………?)
恐らく、この心象世界の主に間違い無いだろう。ショウは、大股に近づいていった。
1メートルくらいの距離まで近づいても、幼い少女はうつむいて泣きじゃくるばかりで、こちらに気付かない。ワイン色をした洋服の小さな肩が、小刻みに震えている。
「…………アスカ。」
ショウは、少しためらいがちに声をかけた。
少女の肩が、ビクンと跳ねる。栗色の髪をした頭がゆっくりと持ち上がり、くりくりとした可愛い瞳が、涙を溜めたまま、ショウの顔を怪訝そうに見据えた。
「…………だれ……?」
桜の花びらのような可憐な唇が開いて、言葉を紡いだ。
「……俺は…ショウ。
佐伯 将(さえき しょう)、だ。」
少女に警戒感を抱かせないように、ショウは笑顔を作り、ゆっくりとした口調で名乗った。
だが少女の顔は、再び泣いていた時のそれに戻っていった。
「おとーさん…………どこ………?」
「………あ……いや……。」
不意に、答えを用意していない問いを投げかけられ、ショウは戸惑った。
そして、なおも少女は泣きじゃくる。
「お……おとう……さん……ひっ……えぐっ……。
……ふ……ふぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜っっ!!」
(………参ったな……。)
武器を持った相手の対処や、錯乱した相手への効果的な説得法といったものには明るい彼だったが、さすがに幼い子どものなだめ方までは習得していない。
火がついたように泣き叫ぶアスカを前に、ショウは只々、無力だった。
`


