電脳遊戯



「お呼び立てして申し訳ありません!実はですね………。」


この陰鬱な雰囲気から解放される安堵感と、その男の持つ肩書きへの媚びからか、女性補導員の態度は気味の悪いほどに軟化していた。


媚びを売られた方は、相変わらず死人のような無表情を崩す事なく、懐から二枚のカードを取り出して補導員と店長に渡した。


「………この件は一切不問という事で宜しいか?」


極めて抑揚の少ない男の声に押さえつけられるように、二人は深々と頭を下げる。


だが男はそんな様子を見ることも無く、既に部屋を後にしていた。


その後ろ姿を、少女は、よろめく足取りで追いかける……。


店から出た表通りで、どうにか男の灰色の背中を見つけたアスカ。再び、重い足取りで追いかけるのだが…………、


その灰色の背中が、まるで二人の間に高くそびえる山脈のように、彼女の接近を拒んでいた。


そして、三つ目の交差点で、その背中さえ見失った。


結局、その男が一度もアスカに振り向く事は無かったのだった………。






それでも、少女は再び灰色の背中を探し始める………。


目と心から、とめどない涙を流しながら……。


『どうして…………?お父さん…………!』


(いや………嫌………イヤ…………!)


「今のアスカ」は、自分の心の痛みが限界に達していくのを感じていた……。


『どうして…………私を叱ってくれないの………?』


(お願い…………止めて…………嫌ぁァァ………!!)


『どうして…………私を見てくれないの…………?』


(い………イ………イ…………!!!)






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