とあるドラッグストアの事務所。
彼女の前の事務机には、ピンクのマニキュアの小瓶が置かれている。アスカは、万引きの現行犯で捕まったのだ。
だが、彼女はマニキュアが欲しくて盗みを働いたのでは無かった。
それは、ある一人の男に会いたいが為に起こした、アスカとしては必死の行動だったのだ。
………だが…………。
部屋に入ってから五時間が経っても、「その人」は来なかった。
「だ、大丈夫よ。お父様も、きっとお忙しいのよ。……ねっ?」
アスカをこの部屋に連れてきた時はあんなに居丈高だった女性補導員が、少女のあまりに辛そうな様子に、いつしか態度を一変させていた。
その時の嫌な感触を思い出した「今のアスカ」は、いつしか嗚咽していた。
(……お、お願い……………。
も、もう、止めてぇェ…………。)
しかし、彼女の願いも空しく、「その時」は来てしまった……。
事務所のドアがノックされ、扉が開く。
現れたのは、この店の店長と………、
いかにもくたびれた灰色のスーツを着た、スーツ以上にくたびれた中年の男性。
その死んだ魚のような目は全く光を宿す事なく、ただアスカを見下ろしていた………。
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