企業警察の二人組が「仮想演出空間」に入ってきた時、アスカは尚も自己の心の迷宮をさ迷っていた。


「理性」の最後の抵抗によって記憶の井戸より掘り起こされた、「ある男の影」────。
それを頭の中から消去しようと躍起になっていたが為に、アスカはすぐには二人の侵入者に気付かなかった。


(いらない…………!

いらないの、アンタなんか…………ッ!)


激しく頭を上下左右に振ったり、拳で叩いたり………。飲んだクスリの影響も手伝って、その行動はさながら狂人じみていた。


その様子を見つけたユッコが、警官二人に見つからないように、部屋を大回りしてアスカの元へとやって来た。


「あ〜〜〜、こりゃ『悪いの』が出たね。……アイツら警官といい、アスカ、あんたホンット、ツイてないわねぇ。

ホラッ!しっかりしなよッ!!」


そう言うとユッコは、アスカの両頬を両手で挟み込むように「パチン!」と叩いた。


「……………痛っ!」


その痛みによって、アスカは一時正気を取り戻す。


だが、いかなる神の悪戯か………、そのタイミングが、あまりにも悪過ぎた。


それは丁度、技術者風の方が、騒ぎ立てる参加者を脅しにかかっている所だったのだ…………。





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