扉の音に、参加者の数名が体を硬くした。
この空間の演出をより完全にする為に、施設使用中はこの倉庫への一切の出入りは止められている。
それを無効化してまでここに入ってくる者が、「歓迎すべき者」である訳が無い。
ほどなく、空間の周囲に張り巡らされた幕状のディスプレイの一部が持ち上げられ、その部分の風景がぐにゃりと歪んだ。
「侵入者」とおぼしき男二人が、そのディスプレイの下をくぐり抜けて空間の中へと入ってきた。
どちらも、未だ青年、といった風貌をしている。
先に入ってきた男は、背こそ標準以上だが、体つきは華奢で、いかにも技術職を思わせるタイプだった。
シルバーアッシュの髪を耳の下で揃え、柔和な表情を引き締めるかのように黒縁のメガネをかけている。
その後に続いたのは、190センチはあろうかという長身の男で、スレンダーな体型ながら身を包む筋肉は逞しく、何かのスポーツ選手を想像させた。
おさまりの悪そうなコッパーブロンドの髪は獅子のたてがみのようであり、鋭い眼光は獲物を狙う猛禽をイメージさせた。
そんな対照的な青年二人だが、着ている服は全く同じ制服である。緑と白を基調とした動きやすそうな直線的デザインの服で、その背中には「S.C.E.P.」の文字がプリントされている。
「企業警察…………!」
パーティー参加者の誰かがうめくように呟く。
技術者風の方が口を開いた。
「お取り込み中のところ、誠に申し訳ありませんね。
……ですが、あなた方の行為はこの施設の本来の使用目的から逸脱しています。
残念ながら、ここいらでお開きという事で。……良い子はおうちに帰る時間です。」
さっさと帰るなら罪は問わない、と言外に言っているのだったが、この場にはあまりにそぐわない、技術者風の青年のどこか間の抜けた物言いが、パーティー参加者の反抗心に火をつけてしまったようだった。
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