アスカは、なかなか回転数の上がらない頭脳をひたすら酷使して、「こうなってしまった原因」を、何とか導き出した。


(……あの……クスリ……!)


ここに入る前にユッコに渡された、緑色をしたカプセル───。


「だぁ〜いジョブよぉ。ヤバいドラッグなんかじゃ無いから。

ちょっとだけ。ちょっとだけ、ね、キモチ良くなる為の手伝いをしてくれるシロモノなのよぉ。」


はっきり言って、飲むのは気が進まなかったが、ユッコの友人たちからも促されたりして、しぶしぶ飲んだのだった。


(………カラ……ダ………が……。)


頭の中では、「理性」が必死の抵抗を見せているようだったが、泡沫のように浮かんでは、虚しく消えるのみだった。


それに取って代わって、駆け抜けるような高揚感がアスカの心と体を支配しつつあった───。


(……もう……いっか……。)


無意識に胸元を隠していた両腕が、力なくダラリと下がる。ギリギリでCカップの胸が、かすかに揺れた。


(疲れちゃったし…………。

守るのとか………耐えるのとか………。)


バラバラな家族。

何かにつけて、他人を蹴落とし、のし上がっていく事を美徳とする学校。

上辺だけの友人たち。


(みんな…………私に全っ然、優しくないんだもん……!)







この「パーティー」が始まってから、たまにこちらの様子をチラチラ窺っていた男が近づいて来るのを、アスカは熱い砂の上に浮かんだ蜃気楼でも見るかのように眺めていた。


まだアスカとそう変わらない年齢だろう。幼さの抜けきらない顔にニキビと薄笑いが浮いている。

その青年はアスカの正面に立ち、ストレートに用件を言った。


「……どうかな?俺と……。」


アスカの頭は、もはや相手が何を言っているのか理解出来ていない。


それでも、未知の快楽の世界に対して抑え切れない興奮と熱意を抱く本能が、彼女の頭を、縦に振らせた………。




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