玄関のドアノブに手をかけた瞬間、不良くんは何か言い忘れたように、ああそうだ!とこちらを向く。
あたしに指を指して、ニヤと笑う。


「俺はあんたでも、不良くんでもねーから♪ちゃんと名前で呼べ!廉ってな。この前は普通に廉って呼んだろ?」

「は、はぁ!?い、イヤだね!」

「きーまり☆呼ばなかったら、罰ゲームあっからー!んじゃお邪魔しましたー♪」


ちょっと!!と声をかけたが遅し。
あたしは壁に寄りかかり、溜め息を零す。
無茶苦茶言う奴だ。
ホント、来てからペースに飲み込まれてたし…。
また大きな溜め息が口から自然と出た。
靴棚の上に置いたお盆を持ち、リビングへ行こうとした。
そのときなぜか、真っ暗で誰もいない家が寂しいと思った。
郁がいなくても、別にそんなこと思わなかったのに何でだろう…。
なんか、急に…あたししかいない家が寂しいと思ってる…。
…廉が来てたから、かな…。