転校生は憧れの人




「なずな、気ぃつけろよ。何かあったら、すぐ俺に連絡すんだからな。わかったか? それから憐、さっき忠告した通り、くれぐれも俺の大切な妹に手ぇ出すんじゃねーからな! ……くそっ、今からバイトとかマジないわ」



私の呟きなんて完全スルーで、お兄ちゃんはぶつぶつぶつぶつ言葉を零す。



「……ごめんな、なずな。お兄ちゃんは今からバイトなんだ。ついて行ってやりたいのは山々だが、こればっかりはしょうがねぇ。……じゃあな」


「う、うん」



がくっと肩を落としながら、とぼとぼと歩いていくお兄ちゃんの背中に、私はそっと手を振った。



「相変わらず愉快な人だね、お兄さん」


「ふ、普段はもうちょっと落ち着いてるんだよ! あはは……」



ああ、とにかく恥ずかしい。


穴があったら入りたい。まさに、そんな気分だった。