「じゃーー」
「ちょっと待って!」
時間がないのは承知の上。
去りゆく憐くんの両手を掴み、私はぎゅっと握り締める。
“大好きだよ、憐くん”
ありったけの想いを込めて。
“無事に帰って来ますように”
切実な願いをのせて。
「あの、何してんの?」
「えっと、憐くんの温もりを忘れないため? ……なんてね」
だって、会えなくなっちゃうんだもん。
「だったらさ」
クスリと笑う憐くんは私の手を離し、そして今度は自身に引き寄せた。
「こっちのが良くない?」
私を包み込む腕は、力強くて、優しくて、温かい。
そんな温もりに身を任せ、目を瞑る。
「うん」
無意識に、声は洩れた。



