「……いいよ」


「ほ、本当に!?」



降ってきた声に、咄嗟に目を開く。



「正直、あの時はかなりムカついたけど……普段じゃ聞けない一ノ瀬の大胆な台詞、聞けちゃったしね」


「なっ!」



その瞬間、己の発言の全てがまた一気にフラッシュバックする。


意地悪な瞳が、真っ赤になった私をじっと見つめてくる。



「……もぉ、憐くん……」



いつも通りの彼。


私は羞恥に侵されながら、嘆きの声を洩らした。



「そろそろ行かなきゃ」


「へ」



突然、不意にそんな声が響いた。


お別れ。


瞬時にその3文字が脳裏によぎる。


永遠に会えないわけじゃないって、わかってる筈なのに。


何だろう……無性に寂しくて。



「……っ、泣くなって言ったろ」


「うっ、だってっ……」



涙が止まらない。



「大丈夫。すぐに帰ってくるから」


「……っ、うん」



優しい声。温かい。


嗚咽を交えながらも、私はしっかりと返事した。