憐くんの腕の中。
恐らく15秒程経った後、唐突に解放された私の身体。
少し名残惜しく感じていると、憐くんは何も言わずにそのままスタスタと歩き出した。
「あっ」
私はそれを追いかけるべく、くるりと振り返った。
「憐くん」
彼に追いつくと、そっと名前を呼ぶ。
そして、しっかりと呼吸を整えた。
「これからは……気をつけるから」
「……」
恥ずかしいから、目線は少し逸らして。
「そ。じゃあ、約束ね」
「憐く――」
「期待はしないけど」
「えぇっ、何で!?」
憐くんの返答に、私は思わず声を上げる。
「ん? 一ノ瀬だから?」
「なっ! ますます訳わかんないよぉ」
何だかちょっと、バカにされているみたい。
だけど。まるで彼らしいその一言に、私はこっそり微笑んだ。



