転校生は憧れの人




――……



「んーっ、皆お疲れー!」



大きく背中を伸ばしながら、吉野くんは部屋中に声を響かせた。


気付けば、時計の短針は“5”を指している。


もうこんな時間なんだ。


私は僅かに凝った肩を揉んで、お開きモードに入ろうとした、その時。



「まだや。まー、今日はこんくらいでええけど、テスト1週間前んなったら部活休みやろ? みっちり教えたるからなー、吉野」



いつかのお返しと言わんばかりに、滝川くんはニヤリと言い放った。



「げ、マジで?」


「ああ、毎日特訓や。お前も、欠点回避したいやろ? 高月もやるよな」


「……まあ」



見るからに、冷や汗をかいたような吉野くん。


私も何か、力になれたら……。


あ!



「わ、私国語ならなんとかいけるから、特訓手伝うよ」


「あたしも、文系なら任せて?」


「2人ともいーの? サンキュー!」



私達がそう言うと、吉野くんはパァッと明るい表情になる。



「何かお前、俺等ん時と露骨に態度違いすぎひん?」


「ほんと。そういうの、よくないと思うけど」



冷たい視線が、一点に集まる。


非難の声を浴びせられた当の彼は、「あははー」とその場をはぐらかした。