「そして、怜佑!」
「れ……え、ちょ俺も!?」
突然向けられた矛先に、滝川くんは目を大きく見開いて叫ぶ。
「お前は、全くもって劇の基本がなってねぇ!」
「はあ?」
「お客に尻向けてどーすんだよ。あとミザンス! お前のせいで崩れてる」
「み、みざんす?」
演劇用語か何かなのだろうか、吉野くんの口から淡々と発された聞き慣れない言葉に、滝川くんは首を傾ける。
凄い。
いつもとは形勢逆転といった感じで、普段は押している滝川くんが、明らかに吉野くんに押されている。
「ホント、お前は全っ然わかってねぇ。これだから素人は困るんだよ」
「はぁ」
ビシッと指を差された滝川くんは、苦笑いを返した。



